血圧の定義

血圧は、私たちの体が必要とする酸素や栄養分を身体の各部分に供給できるように血液を循環させる役割をしますが、血液が循環しないと身体は機能することができません。心臓は収縮により血液を動脈血管内に押し出したり、拡張により全身を循環している血液を心臓に戻すポンプの働きをしています。収縮する時に動脈の側壁が受ける圧力を最高血圧(収縮期血圧)、心臓が拡張する時に動脈の側壁が受ける圧力を最低血圧(拡張期血圧)といい、「最高血圧/最低血圧」に表示します。




1)WHOによる血圧の分類(New Classification of BP Levels by WHO, 1999) (単位:mmHg)
Category(分類) | Systolic B.P. (最高血圧) |
Diastolic B.P. (最低血圧) |
その他の条件 |
---|---|---|---|
Optimal(至適血圧) | ~119 | ~79 | 最高/最低共に満たす |
Normal(正常血圧) | 120~129 | 80~84 | 〃 |
High-Normal (正常高値血圧) |
130~139 | 85~89 | 最高/最低のいずれかを満たす |
Grade I Hypertension (1段階軽症高血圧) |
140~159 | 90~99 | 〃 |
Subgroup: Boderling (下位グループの境界性高血圧) |
140~149 | 90~94 | 〃 |
Grade II Hypertension (2段階中等度高血圧) |
160~179 | 100~109 | 〃 |
Grade III Hypertension (3段階重症高血圧) |
180~ | 110~ | 〃 |
Isolated Systolic HPN (孤立性収縮期高血圧) |
140~ | ~89 | 最高/最低共に満たす |
Subgroup: Boderling (下位グループの境界性高血圧) |
140~149 | ~89 | 最高/最低共に満たす |
*最高血圧と最低血圧が異なる分類に該当する場合は、高い方を適用します。
2)アメリカ合同委員会の分類
治療に重点をおいて血圧を分類する際は、多くの場合最低血圧を重視します。
最高血圧は心周期(心臓の拍動の立ち上がりから次の拍動の立ち上がりまで)の内血管に圧力が加えられる時間が短いのに対して、血管内ではいつも最低血圧以上の圧力が加えられているためです。
Category(分類) | Systolic B.P.(最高血圧) | Diastolic B.P.(最低血圧) |
---|---|---|
正常血圧 軽症高血圧 中等度高血圧 重症高血圧 |
120 以下 121 ~ 139 140 ~ 159 160 ~ |
80 以下 81 ~ 89 90 ~ 99 100 ~ |
血圧は、心臓内部、大動脈、中・小動脈、毛細血管、静脈等の血管で測定することができ、測定値はそれぞれ異なります。
一般的な血圧は、心臓に近い動脈圧で5分ほど安静にした後、腕の動脈で測定した随時血圧(casual of clinic blood pressure)をいいます。
※ 年齢により下記のように分類することもあります。
年 齢 | 血圧基準 |
---|---|
16~39歳 | 140/90㎜Hg 以上 |
40~59歳 | 150/95㎜Hg 以上 |
60歳以上 | 160/100㎜Hg 以上 |

特に収縮期血圧は、食べ物、塩分の量、飲酒、痛み、ストレス、心理状態、測定姿勢により非常に変わりますので、 体調や姿勢を整えて血圧測定を行うことが重要です。
1)血圧に影響を及ぼす外的要因
① 一日中の血圧は、朝と夕方に10~30mmHgの変動があります。
朝(低)→昼(最高)午後(下降)→夕方(再上昇)→就寝(最低)
加齢によって腹部肥満が激しくなり、同じ年齢でも女性より男性の方に多く見られます。
女性は普通、お尻と太ももに先に肉がつき、最終的には腹部に肉がつきます。 特に、閉経後女性ホルモンの分泌が中断すると、内臓型脂肪が蓄積しやすい体質に変わりますので、油断はできません。

② 温度、湿度
冬期、低気温、低気圧、水風呂等は血圧上昇の原因となり、最高血圧の差がより大きくなります。
冬期における入浴後は、最大で50mmHgも上昇する場合もあり、入浴直後の血管が拡張しているときは血圧がしばらく下がることもあります。
暖かい部屋(24℃)より寒い部屋(15℃)の方で約15mmHgの拡張期血圧の上昇が見られ、心理的不安がある場合や姿勢不良のときに筋肉緊張による拡張期血圧の上昇が現れることもあります。
③ 運動
身体的な重労働や運動をすると血圧は上昇し、安静をとるとまた下がります。
④ 精神的ストレス
覚醒状態、ストレス、特に恐怖、不安、怒りなどは血圧上昇の原因となります。
睡眠をとる場合は血圧が20mmHgほど下がります。
⑤ 食べ物
飲酒、喫煙、コーヒー等のカフェイン含有食品、高い塩分の摂取等は血圧上昇の原因となります。
飲酒直後には血管の拡張により血圧がしばらく下がることがあります。
飲食物の摂取中は、収縮期血圧が上昇し、拡張期血圧は多少下降します。
⑥ 疼痛
痛みを感じた場合は、血圧が上昇しますが、持続的な痛みには逆に血圧が低くなります。
⑦ 年齢
中高年以降は、血管の弾力性が落ちて血圧が急上昇する傾向があります。
また、60代以降は最高血圧が急激に上昇しますが、最低血圧は少し下がります。
(mmHg)
年齢 | 6歳前後 | 小学生 | 20歳前後 | 30~50代 | 50~60代 | 70代 |
---|---|---|---|---|---|---|
血圧 | 80~100 | 約 100 | ~120 | 次第に上昇 | 変わり無し | 下降 |
⑧ 性別
20~40歳 : 男性の血圧>女性の血圧
50~60歳 : 女性の血圧>男性の血圧
⑨ 測定中話したりすると拡張期血圧が8~15mmHg上昇することがあります。
⑩ カフが緩んだり、きつすぎる場合、血圧が高く測定されます。

2) 血圧に影響を及ぼす内的要因
血管系の変化、呼吸系の変化 (気管支喘息)、甲状腺ホルモンの変化及び血液の粘度、臓器内の障害発生、発熱等のときに変化します。
① 血管抵抗
動脈の直径が細いほど血管抵抗が増加して血圧が高くなり、最高・最低血圧ともに上昇します。
② 血流
血管抵抗が一定していても心臓から出る血液量が多くなると血圧も上昇します。また、不安、運動、大動脈弁閉鎖不全症(リウマチ熱、大動脈の動脈硬化症等により心臓の大動脈弁がきちんと閉鎖しない症状)の場合、血圧が増加することがあります。このときは最高血圧は上昇しますが、最低血圧は正常又は下降して脈圧が高くなります。
③ 血液の粘度(粘っこい程度)
粘度の高い血液が流れるようにするためには、粘度の低い血液より多くの力が必要となりますので、血圧が上昇します。
血液の粘度は赤血球の数、血中ブドウ糖やコレステロールの濃度に比例して高くなります。
④ 大動脈の弾力性
血管の弾性が低下(加齢、血中脂質の増加)すると血圧が上昇します。老人性高血圧がこの場合に該当します。
最高血圧が上昇し、最低血圧が下降することが特長です。

1) 血圧計の種類
① 水銀血圧計
水銀血圧計は間接法により血圧を測定する最も伝統的な装置で、バルブ(bulb)を通じて直接空気を注入する方法を使用します。測定部位に圧迫を加えた後、徐々に排気しながら聴診器や手で脈拍を感知して脈の立ち上がりと消失における水銀柱の高さを血圧として読み取る測定器具です。構造が単純で誤差が小さいですため、標準血圧計と認められています。
② アネロイド血圧計(aneroid sphygmomanometer)
カフから伝われる圧(血圧)を円形の圧力計に針で表示する血圧計です。
水銀血圧計より便利ですが、一般の測定者が使用するには難しく、第三者の助けが必要となります。
正確度を保つためには、定期的な校正(calibration)が必要です。
③ デジタル血圧計
デジタル血圧計は便利で経済的なため、近年一番広く使われている血圧計です。
ボタンを押すだけで加圧や排気が行われる自動血圧計で、誰でも簡単に血圧測定ができます。
血圧の測定値が数字により 表示され、目盛りが読みにくい年配の方も便利に使用できます。
音声により測定過程の案内及び測定結果が分かるので、視力が弱い方でも簡単に血圧測定ができます。
機器が敏感なため、血圧測定のときは注意事項に従わないと正確な測定ができません。
2) 水銀血圧計とデジタル血圧計の測定方法
水銀血圧計はコロトコフ音による聴音で血圧を測定し、デジタル(電子、自動)血圧計はオシロメトリック法により血圧を測定します。オシロメトリックとは、腕の動脈が心拍毎に収縮を繰り返すことで発生するカフ圧の小さい振動を感知して測定が行われる方法です。
水銀血圧計は聴音を判断する個人差により測定値が変わりますが、自動血圧計は脈の大きさに基づいて血圧を決めますので、機器が正確に動作する場合より正確に測定することができます。
しかし、音と脈が振動と一致しない方の場合、水銀血圧計で測定した値との差異が出ることがあり、このときは実際の脈の振動波を分析すれば、正確な血圧値が分かれます。
当社の全自動血圧計は、先進技術と長年の経験及び臨床を通じて正確な血圧測定ができます。

症状の程度と血圧の高さは必ず比例するものではなく、個人差が大きいです。
血圧が上昇するとき「頭がぼうっとする」、「目まいがする」、「鼻血が出る」、「頭痛があり、視力が弱くなった」等の症状を自覚したら、すでに高血圧による合併症が発生している可能性が高いです。
明らかな症状がなくても定期的な 血圧測定が高血圧の早期発見に役立ちます。
高血圧を治療せずに放置すると、血管は継続的に高い圧力を受けることになり、心臓は高い圧力を維持するためにもっと多く働かなければなりません。この働きは血管と心臓に負担を与え心臓肥大、動脈硬化症等の原因となります。
動脈硬化症は主に心臓、脳、腎臓に影響を及ぼして心筋梗塞、脳出血、心不全、腎不全等の疾患を起こすので、対処の遅延を防ぎ、予防するために早期の高血圧管理が重要です。
病院での血圧測定は、医者との面談、病院という慣れていない環境等の緊張要素が血圧値に影響を及ぼすことがあります。
これらの理由のため自分の実際の血圧より約20-30mmHg高く測定されることがありますが、正しい測定さえできれば、病院よりは家庭での測定を推奨します。
家庭では安静にした状態で血圧測定ができますので、実際に近い正確な血圧値が得られます。
また、規則的な家庭での血圧測定は病院の訪問までの数日間の血圧値を医者に提供することができますので、個人の血圧特性と変動の把握や治療に役立つだけでなく、測定者も自分の血圧の変動が分かります。

また、血圧が加齢に比例して増加しますが、55歳時の血圧が正常な方でもその後高血圧を起こす確立が90%に達するが、高血圧を下降調整して管理すると、高血圧による脳卒中、心臓疾患、心不全等をそれぞれ35~40%、20~25%、50%以上減少させることができるだけでなく、痴呆、認識障害、失明等も予防することができるとしています。
弛緩期血圧の重要性はよく知られており、米国の高血圧合同委員会でも治療のための基準として弛緩期血圧を詳細に分類していますが、50歳以上は収縮期血圧も重要であると指摘しています。

<測定前>
- コーヒー等のカフェインは1時間前から、タバコは15分前から禁じます。
- 環境:最小5分間安静、適正実内温度
<測定中>
① 衣服
- 厚い上着やセーターは脱いで、まくり上げた袖は上腕部を圧迫しないようにしてください。
② 姿勢
- 両足が必ず床につくように正しく座る。
- 中腰になったり足を組んで座らないようにする。
③ カフ
- まくり上げた袖がカフの中に入らないように注意する。
- カフのホースが下を向いて上腕の前方の動脈に位置するようにします。また、カフの下面を肘から2.5cm(1インチ)上に位置させた後、カフを巻き付ける。このときカフは、指一本が入るように巻き付ける。
④ 腕の高さ
- カフの中心部が心臓の高さと同じになるように腕の高さを調節する。
⑤ 測定
- 腕が動かないように肘を腕置き台に固定する。
- 力を入れずに腕を弛緩させる。
- 動いたり話したりしない。
- 加圧を設定する場合は、自分の脈拍消失より30mmHg高く設定する。
- 再測定は1~2分ほど後、カフ内の空気が完全に抜けた状態で行う。
2) 測定姿勢及び位置が血圧に及ぼす影響
- 左右 : 利き腕の血圧が5~10mmHg高い。20~30mmHg以上の差異があれば、医師に相談してください。
- 上腕の太さ : 太いほど高く測定される。
- 腕の位置 : 心臓より高いと最高血圧は低く、心臓より低いと最高血圧が低く測定される。
- 姿勢 :原則的に座って測定す。
- 側臥位 : 上方の腕の血圧が下方の腕の血圧より少し低い。
- 水液を注入している場合、他の腕で血圧を測定する。
3) 次の場合は、測定結果にメモを加え、医師に相談してください。
- 測定前の喫煙
- コーヒー等カフェインが含まれた食品の摂取、飲酒、食事
- 血圧に影響を及ぼす薬の服用
- 投薬時間及び量
- 排尿直前の測定
- 測定前1時間以内の痛みを伴う行動
- 運動又は測定前の活動
- 測定時の姿勢、測定を行った腕(左/右)

1)別の腕で測定した場合
初めて血圧を測定するなら、両方とも測定した後、高い方を自分の血圧にします。また、次の測定からは血圧の高かった方の腕で血圧を測定します。右腕と左腕の血圧差が20~30mmHg以上である場合は、医師に相談してください。
2) 測定姿勢
普通、臥位よりは座位で、座位よりは立位で測定された血圧が高いです。
仰臥位(supine position;あおむけに寝ること)で血圧を測定する場合は、立位に比べて収縮期血圧が10~15mmHg、弛緩期血圧が10mmHgほど低く測定されます。また、側臥位では上方の腕が下方の腕より血圧が少し低いです。
3) 白衣高血圧
白衣(White coat)高血圧とは、自家測定では正常血圧ですが、病院あるいは医師の前では血圧が高く測定されることをいいます。約20~30mmHgほど高く測定されることが多いです。
4) 血圧の変化
血圧は一日中変動します。睡眠中に最低値を、午後2~3時に最高値を示し、徐々に下降して夕方は少し上昇します。
夏は血圧が低いし、冬は高くなります。その他にも暖かい部屋(24℃)より寒い部屋(15℃)では拡張期血圧が約15mmHgほど上昇することもあります。
5) 動脈細動がある場合
年配の方における動脈細動は一番よく見られる不整脈で、高血圧と関連があります。
不規則な脈拍は血圧測定を妨げますが、特にコロトコフ音の解釈に困ります。
6) 最低血圧
スワン第4点と第5点の差は人それぞれです。第5点がほぼ零に近い場合もありますが、このとき第4点を最低血圧にとるか、又は第5点を最低血圧にとるかにより差異が発生します。
7) 聴診間隙(auscultatory gap)
聴診間隙(auscultatory gap)とは、非正常な無音状態の期間で、カフ圧を下げていくと聞こえていたコロトコフ音がいったん消え、再び聞こえ始めます。聴診間隙を逃して次の音を最高血圧にとる場合は、最高血圧が非常に低くなります。
8) 不正確な血圧計の使用
アネロイド血圧計は、基準値を零点に調整するべきであり、他の血圧計も規定で決められているように調整を行わないと正確な血圧が測定できません。
9)その他
- 上腕の太さ : 太いほど高く測定される。
- 腕の位置 : 心臓より高いと最高血圧は低く、心臓より低いと最高血圧が低く測定される。
- 水液を注入している場合、他の腕で血圧を測定する。